ウェディングドレスと6月の雨
車を降りる。空からの日差しとアスファルトからの照り返し、灼熱地獄。でもそれもサウナみたいで気持ちがいい。車で来た坂を歩いて降りていく。眼下に広がる海。そして僅かに香る潮の匂い。
「今の保養所って?」
「研修中、ビールが飲みたくて抜け出したら保養所のおじさんがコピー機の前で困ってるのが見えて。直してやった」
「え、だって新入社員研修のときの話ですよね? まだコピー機の仕組みなんて」
「ああ。大学で機械は学んでたから」
「そうですか……」
それ以来この会社はずっと得意先、と穂積さんは言った。
「入社当時は俺、アフターサービスに所属してたんだ。でも向いてるから営業に行けって言われて」
「さっきのおじさんに?」
「……いや。神辺さんに。俺は人見知りだし、無愛想だし、営業なんて無理だって言ったんだけどな。神辺さん人事部だから勝手に俺を推して」
「でも穂積さんってエースだって言われてますよね」
「結果的には良かったけど。ここに来るまで結構苦労した」
坂を下り終えて、目の前には海。弧の先端部分、岩場に波が当たり砕けるのが見えた。手前の道路を横断して、浜への階段を下りる。
「今の保養所って?」
「研修中、ビールが飲みたくて抜け出したら保養所のおじさんがコピー機の前で困ってるのが見えて。直してやった」
「え、だって新入社員研修のときの話ですよね? まだコピー機の仕組みなんて」
「ああ。大学で機械は学んでたから」
「そうですか……」
それ以来この会社はずっと得意先、と穂積さんは言った。
「入社当時は俺、アフターサービスに所属してたんだ。でも向いてるから営業に行けって言われて」
「さっきのおじさんに?」
「……いや。神辺さんに。俺は人見知りだし、無愛想だし、営業なんて無理だって言ったんだけどな。神辺さん人事部だから勝手に俺を推して」
「でも穂積さんってエースだって言われてますよね」
「結果的には良かったけど。ここに来るまで結構苦労した」
坂を下り終えて、目の前には海。弧の先端部分、岩場に波が当たり砕けるのが見えた。手前の道路を横断して、浜への階段を下りる。