ウェディングドレスと6月の雨
きっと、そんな下積み時代、穂積さんは彼女に支えられてきたのかもしれない。砂浜に下りるとミュールは砂地にのめり込んで、つま先が火傷しそうな位に砂は熱かった。ピョンピョンと兎のように跳ねて、突き出した岩場に飛び乗る。
穂積さんはスニーカー。ゆっくりと砂浜を歩き、私の後に岩場に乗った。そして岩場の波打ち際まで進む。白い泡立った波が時折足元をくすぐる。そして穂積さんはしゃがんで岩の隙間を覗くと小さな蟹を捕まえた。
砂浜の波打ち際に移動する。色の濃い濡れた砂地はヒンヤリとしていた。穂積さんはスニーカーを脱いで、寄せる波から逃げては引いた波を追い掛ける。無邪気な笑顔、純真。しばらく海で過ごしたあと、私たちは車に戻った。
穂積さんは私のアパートの前まで送ってくれた。路肩でハザードランプをつける。
「ありがとうございました」
「いや。付き合わせて悪い」
「楽しかったです」
助手席のドアを開けて降りる。
「なあ」
「はい」
「来週もいいか?」
私は笑顔で頷いた。