バス停
彼女にこんな話をすべきかどうか、正直悩んだ。 だけど今を逃したら彼女と話をする機会なんてもうないかもしれない。恋愛上手の彼女なら何かいいアドバイスをくれるはず。そう思い、くだらない悩みを打ち明けてみる事にした。私は俯きながらも言葉を少しずつ紡いだ。
「介護概論の先生いるでしょ。私、好きなんだよね。気付いたら好きになっていた。それで先生いつも授業午前で終わって帰るでしょ?だから今日待ち伏せしたんだ。そしたら嫌がられちゃった。」
「あーなるほどね。」

彼女はさほど驚く様子もなく、かといって馬鹿にする様子もなく、ただ淡々と灰皿に灰を落としながら話を聞いている。
そして冷静に問い掛けた。
「今まで何度か午後の授業さぼってたみたいだけどさ、もしかしてそれも全部待ち伏せの為?」

「そうだね、まぁ。て言っても待ち伏せしたのは今回と一回目の授業の日だけ。一回目の授業の日は、その日の授業の話題とか色々話す事があって楽しかったんだ。だけど二回目の待ち伏せは先生あんまり喋ってくれなくて」
「確かにあの先生可愛いもんね、私も嫌いじゃないょ」そう言って彼女は悪戯っぽく笑みを浮かべた。私にとってはとても大人に思える先生をそんな風に可愛いと言い切ってしまう彼女の口ぶりにまた大人の余裕を見せつけられた気がした。
カラーリングを繰り返したせいで痛みが激しい上に、色が抜けきった茶髪のショートヘアの私とはエライ違いだな。
そう思った。
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