バス停
「やっちゃいなょ」
彼女はいともあっさりと言った。
その言葉に私は驚いて顔をあげた。その私の顔をみながら彼女は更に続ける。
「そういう駆け引きみたいなのっていちいち面倒臭いじゃない。元々教師を狙う事自体、勝ち目ないんだし。だったら手っ取り早く体で黙らせちゃえばいいのょ」
そう言って彼女は左手に煙草を持ちかえ、右手で髪の毛をいじる仕種をしながらニコッと微笑んだ。私の事を馬鹿にしてるのかしら。私は彼女の発言の真意を計りかねてしまった。
「いゃ、別にそういう事をしたい訳ぢゃ」
口ごもる私の瞳を彼女はうるんだ瞳でじぃっと見つめて真面目な顔で続けた。
「それなら、休日に遊園地行って手をつないでキスしてとか、そんな子供みたいな付き合いがいいわけ?本当はもっと体の奥底から触れ合いたいでしょ?それが大人の付き合いの醍醐味じゃない。ああいう勉強ばっかの頭でっかちは一度理性さえ飛んだら歯止めきかなくなって、くらいついてくるから。そこにポイントを合わせるしかないわ」

「簡単に言わないで。デートにだってまともに誘えないのに、私はあなたと違うのょ。そりゃ、あなたみたいに綺麗ならできるかもしれないけど」
私の口から思わず出た卑屈な台詞に彼女の動きは止まった。そして更に私の瞳を覗きこむ。

「この世には何の為にメイク技術があると思ってるの?馬鹿な男を騙す為でしょ。それより大事なのは行動力と話術。それさえあればエッチなんて余裕だわ。授業もあと2〜3回だしさ、テスト始まったら会えなくなるし。勝負かけょ。私、手伝ってあげる」

予想外な言葉に驚く私の顔をみて彼女は更に続けた。「まかせて」
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