バス停
ちょっとごめんと私の肩にそっと触れ少し私の体を横にやると手慣れた様子でプリンターをカチャカチャいじる。
「これで大丈夫かな?多分だけど」そう言って彼はふと笑った。その言葉通り大きな音と共にプリントアウトしたレポートが次々に流れ出した。

「すごいですね」私は思わずそう声をあげた。 それに反応し「えっそうですか?まぁ紙詰まりですから」彼は私の方を振り返ると少し照れた様にはにかんだ。たかだかこんな事で褒められるのが不本意なのかもしれない。よく見ると色白の肌に細くて涼し気な目がとても印象的な男性だ。短髪の坊ちゃん刈りの様な頭がいささか彼を幼くみせている。

「まぁ確かに」そう言いながらその彼の様子を見て私も思わず笑ってしまった。そして笑いながら私は驚いた。この時私はこの学校にきて初めて笑っていた。
ついでに言えばこの学校に来てから授業以外で初めて喋った気がする。
それから彼は私の隣のパソコンの前に座りスイッチを入れた。

私はプリンターから次々溢れてくる原稿をまとめながら彼を見た。スーツ姿がやけに大人の色気を漂わせる。いわゆるスーツマジックか。スーツ姿は男性の魅力を9割増しアップさせるのだ。
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