バス停
私は嘘をついた。確かに辞めようとは思っているけど、何も明日すぐにという事ではない。でも何となく驚かせてみたくて思わずそう大袈裟に言ってしまったのだ。
こんなふざけた事を言う生徒なんて先生は呆れて 相手にしないだろう。
しかし彼は意外にもその言葉を真剣に受け止めたらしくパソコンから完全に目を離し、私の方に体を向けた。

「どうしたの?」

「学校つまらなくて。友達もできないし」
自分で言って呆れてしまった。 一年もこの学校にいて今更何を言っているのだろう。こんな子供みたいな事を言ってしまったらきっと馬鹿にされるに違いない。 しかし彼は
「あぁ、」と一言言ったきり戸惑った様に言葉を探していた。「それは難しい問題ですね」
その真面目くさった言葉に今度は私が戸惑った。 そして何となく恥ずかしくなってしまった。冷たくすかしてくれた方がよかった。
「僕は今も大学に残って色々勉強してますけど、こういう事はどうも。でも、とにかく目的を持って学校に来てる訳だから簡単に辞めるのは勿体ないですよ。友達はまぁ僕も人つき合い苦手だから気持ちは正直分かります」分かります。その共感の言葉が何よりも染みた。
< 5 / 17 >

この作品をシェア

pagetop