(完)ずっと君といれるなら 〜 別れ 〜
喋りながら手を動かしていたが、30分ほどで終わった。


終わったら職員室の担任の机に置きに行かなきゃいけないんだけど。


私たち、一年生の教室は3階。


職員室は1階。


長い長い階段を降りなければならない。


私に対して優しさなんてカケラもない海斗が俺が持つよなんて言ってくれるはずない。


仕方ない。


ため息をついて机の上に積み重なった資料を両手で抱えた。


大人になった葉月ちゃんは無駄な争いは避けるのだ。


「うう”…。」


思わず呻き声をあげる。


結構重いし。これ。


そんな風に苦しんでいると、海斗がわざとらしく息を吐いて言った。


「ばーか。」


何が、そう言い返そうとしたらどういうわけか海斗が私の手から資料を取った。


呆気にとられている私をみて


「中学生になったら男女に力の差が生まれるんだろ」


照れてるのか知らんけど違う方向を見ながら話す海斗を見て思わず吹き出してしまう。


「明日は嵐確定だな。」


「ああ?あ、てかお前は中学生でも女子じゃないか」


「え?」


「人間の皮被ったゴリラだろ」


「つい先ほどまであんたのこと今見直してたんだけど、この数秒の無駄になった時間返してくれる?」


「返すかバーカ」



歩きながらドンっと海斗の肩を私の肩で押すと、海斗はほんの少しも揺れることなく私を押し返してきた。


適当に中学生になったら男女に力の差が生まれるなんて言ってたけど実際そうなんだなって思ってちょっと悲しくなる。


海斗はどんどん私より大きくなってがっちりして喧嘩なんてしたらボコボコにされるだろう。


こうやって、性別を意識しだして喧嘩したりもできなくなるのかな。


それはそれでちょっと寂しいかもしれない。


「おい、生きてる?」


「生きてるよ。…ねえ、海斗。中学生になっても今まで通り喧嘩しようね」


「はあ?お前喧嘩したいわけ?」


「あ、でももう殴り合いの喧嘩は嫌」


「わけわからん。どうしたんだよ急に」


「んー、中学生になったら本当に変わっちゃうのかなって思って」


「…変わんねえだろ」


「なんでよ」


「なんとなく」


そう答える海斗はなんだか少し大人びて見えた。


「…やっぱ明日は嵐だな」


「ん?」



「なんでもなーい。ほらさっさと行くよ!」


そう言って駆け出した。


変わっていくのは悲しいけど、


でもそれがどんな風に変わっていくかわからないからきっと面白いんだろうななんて思う私もきっと少し前より大人になったんだろうな。









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