(完)ずっと君といれるなら 〜 別れ 〜
ーーー小学1年生


「ただいま!」


「おかえりなさい。今日はケーキがあるわよ」


「本当⁉︎」


「ええ。ほら手を洗ってきなさい。満月も!」


「「はぁーい!」」


「満月!いこ!」


「うん!」



あの頃は「みんなに愛されて、頭がよくて、可愛くて、明るくて、なんでもできる葉月ちゃん」だった。



いつだって私はみんなの中心にいた。





私のお父さんはホテルやビルを経営する森山グループの次期社長だ。



残念ながら、うちには男の子が生まれず、長女の私は凄く期待を背負わされて育てられた。



お父さんはすごく厳しくて、テストが満点じゃなかったり、服を汚したり、喧嘩したりしたら平手打ちが飛んできた。




いつだって1番。
おしとやかに、令嬢らしく。



それが、お父さんの理想だった。




きちんとしないと殴られる。
そんな恐怖が私の頭に植え付けられた。



ピアノに茶道、塾に護身術。
一週間は習い事で埋め尽くされていた。




辛かったけど、お父さんの理想にならないと、いつか殺されるかもしれない。
そう思ったら、どんなことも頑張れた。


< 35 / 274 >

この作品をシェア

pagetop