6月の恋人
―ジリリリリ…。


低血圧な僕の耳元で勢いよく、目覚ましが鳴った…


「…げっ、もう朝?早すぎなんだよ~…」


僕はそう言ってまた深い眠りに入ろうとした。


―まぁ、お腹痛いって言って休めばいいや…


そんな甘い事を考えていると、スゴい足音と共に親父が部屋に入ってきた。


ダンダンダンダン…


「おっきろー!お父様が起こしに来たぞぅ!」


毎日毎日、うちの親父は一言一句間違う事もなく起こしにくる。


「…今日、お腹痛いから休む…」


確か、この台詞も何度か使ってる…

「葉瑠くん!そんなに痛いのか…!び…病院に行こう!お父さんが連れてってやるから!」


そう言うと、寝てる僕をベッドから起こし、おんぶしようとする。
確か、この前もこんな事になったな…


「はぁ…もう大丈夫だから、病院は。着替えるから下に行っててよ。」


毎日、この永遠ループな日常を僕は過ごしている。

もしかしたら、親父の方が一枚上手で、僕を起こす方法なのか…?考えたらキリがない。

僕は、制服に着替えて一階のダイニングにおりていった。

「お腹は大丈夫なのか…?葉瑠くん…?」
「もう、葉瑠くん!早くご飯食べないと遅刻するよ~!!」
天然なのか、それとも素なのか…?毎回、親父は僕の薄っぺらい嘘に引っ掛かる。
小さい頃、母親を亡くしてから僕と親父と妹の3人になった。
その頃から親父は僕を起こす役割となっている。妹は朝からやることいっぱいあるとか言って早起きだからだ。

「チィちゃんは、良く早起き出来るな…僕は無理だよ~」

などと、一応ゴマをすっておいたりする。
これが、三浦家の朝だ。


「あっ、そうだ葉瑠くん!雨降ってるから傘持って行ってね!」

雨…か…。雨にはいい思い出がない。でも嫌いじゃない。…けどね…。

あの出来事が無ければ…。

雨はこの汚れた街の空気を一気に綺麗に流してくれるようで、雨の匂いが好きだ。

少し前に友達にそう言ったら、じゃあ、俺も雨が好きになった。と言われた。

懐かしい、久しぶりにまたアイツを思い出す季節になったのか…。

もう、三年になるよ。玲(あきら)…。



僕と玲は小学校からずっと一緒で、家も近く当たり前のように同じ中学に通っていた。クラスこそ同じではなかったけど、部活も同じバスケ部だった。




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