大事に、したいのに。
一応、一人で読んだ方がいいのか?

こういうのって。

そう思って辺りを見回すが、どうせ誰もいない。

今は始業よりだいぶ前なのだった。

運動部でもないのに始業だいぶ前に来て、教室で宿題をするのが日課なのだ。

涼しいし静かなので結構集中できる。

そこまで思い、ふと一か月位前の日を思い出した。

あの日、普段通りに朝宿題をやっていると、廊下でいきなり転んだ奴がいたんだ。

そいつは

「きゃ」

と小さい声を上げてつまずき、そのまま手に持っていた物全部ぶちまけた。

「あーもう…やだやだ、もうっ」

一人で小さく呟きながら飛び散った物を集めていたが、やがてその音が止まった。

どうしたんだろう、と思いそちらを見てみる。

その子はうちのクラスの前の方を見ていた。

なにかと思うと、目線の先に薄ピンクの筆箱が転がっていた。

あそこまで飛ばしたのか。

取りに来ないということは…

別クラスだから入るの遠慮してる、とかからか?

ま、取ってやるか。

放っておくわけにもいかないしな。

席を立ち、それを拾ってその子に差し出す。

そいつは

「あっ、すみませんすみませ…っ!!!」

と立ちあがってペコペコと頭を下げた。

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