大事に、したいのに。
ふわふわと髪が何度も揺れる。

あまりにも何度も申し訳なさそうに謝るから、思わず

「いい。早く持ってけ」

と言ってしまう。

口走ったあとでしまった、と体を硬くした。

言い方キツかったかもしれない。

このパターンで何度も怖がられてきた。

やばいな、と少し焦るが、その子はパッと顔を上げて

「あ、はい!ありがとうございますっ」

と筆箱を両手で受け取った。

あまりにも自然な動作に

「…おう」

と俺が生返事をすると、ふわ、と笑顔になってもう一度頭を下げて立ち去った。

俺と話して、笑顔で帰った初対面の女子なんて何年振りだろうか。




…あの笑顔、可愛かったな。

下駄箱に突っ立ったまま、ぼんやりとその顔を思い出す。

ぼーっとしていると、

キーンコーンカーンコーン。

間の抜けたチャイムの音。

その音に我に返る。

5分ほど何もせずに立っていたようだ。

変だな。

何やってんだ俺は。

とりあえず教室に向かう。

手紙はそこで読むことにした。

タイミング良く、今日は急ぎの宿題が無い。

教室には誰も居ないだろうし。

…っていうか、俺が登校するより早くに俺の下駄箱に手紙入れた奴がいるってことだよな。

そいつもだいぶ早起きらしい。

一体誰なんだろう。
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