大事に、したいのに。
思い通り、教室には誰も居なかった。

まったく何なんだろう。

そう冷静に思っているような気になりつつ、どこか心の中で焦っている自分がいる。

バカバカしい。

そんな、ラブレター、だなんて、

この時代に、しかも俺なんかに宛てて

あるわけがー…

ない、と思いかけた思考が止まる。

精一杯丁寧に出して開いた便箋の、最初に。

いきなり

『貴方が好きです

付き合って欲しいです』

と書かれている。

マジか?

こんな文面を見たところで、まだ信じられない。

俺に好意を寄せる奴なんて、しかも女子なんて。

存在しない、はずだ。

手紙を読み進めると、今日の放課後に裏門で待っていると書いてある。

…なんだこれ少女漫画か?

トキメキ致死量か。

もうラブコメ展開に脳が付いていけない。

頭がボーっとしてきたんだが。

そうかこれはきっとアレだ、少女漫画と見せかけて男子校漫画だ。

きっとコレはクラスの男子からで、裏門行ったら笑われるんだ。

ここ共学だけど。

天井を仰ぐと、廊下からガヤガヤと声が聞こえてきた。

確かあの声は、同じクラスの。

反射的に手紙を鞄に突っ込むと、その直後にそいつらが入ってきた。

ふぅー危ない危ない。

そう思ってしまってから、ちゃんとラブレターとして認識してしまっている自分に気付く。

…いや恥ずかしい。

わかってたよバカヤロー。
< 5 / 14 >

この作品をシェア

pagetop