引き立て役よさようなら(番外編追加)
「なに?これ・・・」
ぼそっと優花が呟くと
達央はエンジンをかけてゆっくりと発進させた。
「外科医を殴るんじゃないかって心配してたんじゃない?」
「え?」
確かに何かトラブルが起きたら嫌だなとは思ったけど
達央が人を殴るというイメージが優花にはなかったので驚いた。

「俺さ・・・昔1度だけブチ切れて、人を殴った事があったんだよ。
 そしたらさ・・・殴られた方は口が少し切れただけだったんだけど
 俺、あの頃体力が今ほどなかったからさ~~殴った方の手首を捻挫
 しちゃったんだよね。医者に見せたら『何の種目ですか?』なんて
聞かれてさ~。そんなこと言われたらギターですとは言えなかったから。
陸上って答えちゃった」
「陸上?」
「練習中に器具にぶつかって・・・って後で付け加えた」
達央の話を聞いて笑う優花に達央は
「・・・やっと笑ったね。」
そう言って優花の頭を左手で撫でた。

信号がちょうど赤になり車が停車した。
「達央さん・・・・」
「優花はいつも遠慮してるよね。さっきだってそう・・・
 俺に気を使って本心言ってないし・・・それって疲れない?
俺の前では遠慮しない!思っている事ちゃんと言ってよ」
「思ってる事・・・」
「ってかさ、本当はどうなの?俺がこのまま君を送り届けて
はい、さようならって言ってさっさと帰ってもいいの?」
そんな訳ない。本当はずっと一緒にいたいよ。
でも素直に自分の我儘を言って困らせたくない。
優花が口ごもってると
「じゃ・・・今日はこれで帰るよ」
「え?!」
「心に思ってる事言わないならね・・・」
「・・・・いや」
ぼそっと小声言ったが、達央に聞こえないと言われた。
「…嫌・・一緒にいたい」・・・そう呟いた。
< 141 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop