引き立て役よさようなら(番外編追加)
「達央さん!いいんですか?先に帰って」
スタジオの大きな扉を開ける達央の背中に話しかけるが
達央は、振り返ることなく大丈夫とだけ言った。

そもまま引っ張られるように歩いていると、優花のいた楽屋の前に
唯が立っていた。
唯と目が合い、軽く会釈すると笑顔で返してくれたのが・・・
「たーつ!ストーップ」
腰に手を当てた唯が待ったをかけた。
「おー!唯、今日はありがとな。」
先を急ぐ素振りでお礼を言った達央だが、唯にしっかり止められた。
「なんだよ~」
邪魔すんなとでもいいたげないい方だ。
「優花ちゃんに会えて、頭ん中お花畑な気持ちになるのはわかるけど
あんた、彼女をその格好で帰すつもり?」
唯に言われた達央は回れ右をして優花を見た。
「あ!」
「あ!」
2人の言葉が同時に重なった。
よく見ると優花は素足のままだった。
2人のリアクションに唯は軽い溜息を吐く。
そして紙袋を差し出した。
「これ、優花ちゃんが着ていた服と靴とバッグ。あんた
 その辺の事もちゃんとしないと~愛想尽かされるわよ!」
思っていた以上に姉御肌だった事に優花は驚いていたが
唯は優花に
「よかったね。幸せになるんだよ」
耳元で囁かれた優花はうれしさと恥ずかしさを滲ませた笑顔を
唯に見せた。
達央から靴を受け取った優花はそれを履き、スタジオを後にした。
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