引き立て役よさようなら(番外編追加)
達央の来た場所はステージだった。
ステージの中央に立った達央がステージの袖で止まっている優花に手招きをし、
こっちにおいでと言った。
確かに開場前で誰もいないけど素人の自分が足を踏み入れるなんて
とんでもないと全身で拒否する優花に
「なんで?おいでよ。まだ誰も来てないし・・・・話があるんだ」
話ならここで聞くと優花は何度も拒否したのだが
しまいには手を掴まれてステージ中央の達央の立ち位置に立たされた。

「す・・・すごい」
初めてステージから客席をみた。
オールスタンディングでイスは2階席のみだが
その広さに優花は圧倒されていた。
「初めてのライブはここの半分以下の広さでね・・・客はみんな自分達の友達ばかりで
しかも演奏は最悪・・・今思えばあんなんでよくライブやれたなって思うよ。
最初は調子こいてたけどだんだんさ~こんなのにわざわざ金を払って聞きに来てくれる
のが申し訳なくてね。バンドを続けるかやめるかって時もあったんだ。」
「そんな風には見えない・・・」
優花はかなり驚いた様子で聞いていた。
「でもさ~続けるって言う選択をしてからの4人は違ったよ。
コツコツとオリジナル増やして・・・ライブもまじめにやっていくうちに
ファンも増えて、デビューが決まり・・・初めてライブをしたのが・・・・ここなんだよ」
「え?!ここ?」
達央は優花の手を握ると顔を覗き込むようにそうだよと笑顔で答えた。
「ここが俺達flybyの出発点。そして今日はflybyと・・・俺と優花の新しい出発点
だって俺は思ってるんだ。」
「達央さん・・・・」
達央の言葉には強い思いと意志を感じた。
「俺も本当はすげー緊張してんだよ。だけど優花がいるから落ち着いていられる。
 だからさ・・・今日は一緒に楽しもう!」

「うん・・・」
頷く優花を抱きよせ優花の顎に手をかけた。
「な・・なに?」
達央はニヤリと笑うと
「めちゃくちゃいいステージにしたいから・・・ちょっとチャージさせてね」
優花の返事など無視して達央は優花に唇を寄せた。
触れあうだけのキスだけどそれがステージの上だと何となく本当にチャージ
している様な気持ちになる。
唇が離れ、互いのおでこをくっつけて笑ってると
ステージの奥の方で
達央を呼ぶ声がした。
体は自然と離れたと同時に声の主が現れた。
横田だった。
「やっぱりここか・・・。もうすぐ開場だよ。そろそろ達も準備しないと・・・」
3人は控室へと戻った

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