引き立て役よさようなら(番外編追加)

ライブ直前

「じゃあ・・・行ってきます」
達央が何度か一緒に会場に行こうと言ったが、優花はそれを断った。
チケットはもらったけど、それ以外は他のファンの人と同じように
ちゃんと入場ゲートから入って見たかったから。
「気をつけて・・・」
達央は靴を履くと優花の方に向き直った。
「ちょっとパワーもらうね」
そう言ったかと思うと、触れるだけのやさしいキスをした。
お互いの唇が離れると達央は目尻にしわを寄せながら笑顔で
充電完了と親指を立てて、会場へと向かった。

ドアが閉まると優花はソファーにドカッともたれるように座った。
そして昨夜の事を思い出した。
『・・・今夜隣で・・ただ隣で一緒に寝てほしい・・・』
その言葉は本当で、1つのベッドに2人で寝ただけだった。
よっぽど疲れていたようで、ベッドに入って間もなく達央の寝息が聞こえた。
自分が送ったメールで、大事なライブ前日に心配かけちゃって
申し訳ない気持ちと、一番会いたい人に会えた喜びが入り混じっていた。
優花は、眠ってしまった達央の髪の毛をなでると。
小さな声で「おやすみなさい」・・そういって自分も眠りに着いた。
だが今朝起きた時はさすがに驚いた。
達央は優花を抱き枕の様に抱きしめて眠っていたからだ。
気がついた時にはもう、身動きがとれず、達央が起きるのを
ただただひたすら待っていた。
でもそれは決して嫌ではなかった。
ドキドキしたけどなんかすごく幸せな気持ちだった。

優花はソファーから立ちあげると
掃除洗濯、・・帰りが遅くなるだろうからと
あらかじめ晩御飯の用意だけでもしておこうと
カレーを作った。
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