私がお嬢様をやめる時
「お嬢様。」

水嶋に呼ばれてハッとする。

「見に行きましょう。」

そう言って水嶋は
スタスタと歩き出した。

「み…水嶋。」

この時の私はどうかしていたんだ。
カップルに囲まれて
羨ましくなってたんだ。

振り返る水嶋に手を出す。

水嶋が初めて驚いた顔をした。

「手…つないで。」

水嶋のその表情は戸惑っていた。



ここにいる人達は
私たちがお嬢様と執事だなんて
誰一人知らない。


きっと私たちはカップルに見える。
今だけでいい。2時間だけでいい。

「カップルのフリして。」


ワガママなのはわかってる。
迷惑なのはわかってる。
でも、水嶋と手をつないで歩きたい。
水嶋がいけないんだ。
私の手を取ったりするから…
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