私がお嬢様をやめる時
「2時間だけ…
執事を忘れていいか…?」

優しい声だった。
優しい顔だった。
執事の水嶋じゃなかった。
優しい男の人だった。

私は瞬きしたら涙が零れそうなくらい
目に涙が溢れてきているのがわかって
うつむこうとしたけど
間に合わなかった。

私の頬を涙がつたう。


この涙がどういう意味なのか
水嶋にはきっとわからない。
恭平を思い出してるとか
思われてるのかな…。

私はね。水嶋が大好き。
水嶋が大好きなんだよ。




「菜々穂。」

そう呼ばれて胸が熱くなる。
水嶋がそっと涙を拭ってくれる。

「行こうか。」

私の手をぎゅっと握って
カップルたちに紛れて
ゆっくり歩き出す。



私たち
カップルに見えるかな?
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