私がお嬢様をやめる時
サーカスというものを初めて見た。
サーカスってクマが三輪車乗ったり
象が玉乗りするイメージだったけど
そんな子供騙しのものではなかった。

人が宙を舞い、音楽も演出も
想像と全く違った。


「どう?面白かった?」

「ピエロって出て来ないんだね。」


「え?ピエロ?」


私の想像するサーカスを説明したら
恭平くんは
一瞬キョトンとしてから笑った。
この人の笑顔は素直な笑顔だな…

会場から出る人の波は
思ったより多く、歩きにくかった。
でも、それにすぐ気がついた恭平は
すっと私を守るように肩を抱いた。


「ごめんね、でも危ないから。」


肩に触れてごめんね。
という意味なのだろう。
そんな所も素敵だな。と思った。

もみくちゃの会場から外へ出ると
すごく空気が綺麗な気がした。

外へ出るとぱっと私の肩から
恭平は手を離した。

その瞬間、ちょっと寂しいな…
って思ってしまった。

「腹減らない?軽く何か食べようか?」

「あ、うん。」
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