私がお嬢様をやめる時

俺は菜々穂の側にいてやりたいと
思うようになっていた。

菜々穂は
俺の無表情に不満のようだった。

そう。俺はこの家に来てから一度も
菜々穂に笑いかけたことはない。

最初はこんな娘の執事なんてという
不満の気持からだった。

でも、今は菜々穂に対する気持を
抑えるため。

愛に飢えてる菜々穂は
ただでさえこんな無表情な執事でも
すごく慕うようになっている。

もし俺が笑ったら…
それ以上の感情を
持ってくれるかもしれない。

それは俺が心の何処かで望む事…
でも、それは許されない。

そんな関係になったら
俺はこの仕事を外される。

そして
菜々穂にまた別の執事がやってくる。
そしたら
きっとまた菜々穂は
心を閉ざしてしまう。
そんな思いはもう絶対させたくない。

菜々穂には素敵な男と出会って
いつか結婚して
賑やかな家庭を築いて欲しい。

本当はその相手になりたい。
でも、俺は執事であることを選ぶ。

俺のこの想いは
しまっておかなければいけないんだ。
そう思っていたのに…