深夜残業の攻略本
深夜残業の攻略本
男って本当にクソだな。
目の前の液晶ディスプレイに映る、裸の男女のイラストに悪態をつく。
18禁のエロゲーの攻略本のレイアウトを組みながら、なんで夜中にこんなくだらない仕事をしなきゃならないんだと舌打ちをした。
冴えない営業マンが、出会った美女を次々に落としていくというありがちなエロゲーだ。
普通こんなアホなシチュエーションに興奮するか。男ってなんてバカな生き物なんだ。
そんな事をぶつぶつ呟きながら仕事をしていると、
「じゃあ自分先に帰ります」
去年の春にこの会社に入ってきて、ようやく一年になるひょろりと背の高い新人の高橋が、マックの電源を落として立ち上がった。
「んー、お疲れ」
「そういえば、ここに封筒一個置きっ放しになってますけど、大丈夫ですか?」
栗色の髪を首を傾げたマッシュルームカットみたいに耳の上で左右非対称に切った奇抜な髪形に、溶けだした溶岩みたいな微妙な色の太いセルフレームの眼鏡をかけた高橋が、相変わらず可愛げの無い無感情な声であたしに向かって封筒を振って見せた。
大丈夫ですか、じゃないよ。
置いてあるの知ってたならさっさと渡せよ。
という心の声を我慢して、マウスを止めることなく「開けてみて」と顎で指示する。