おにぎり屋本舗 うらら
うららは眠っていた。
余程酒が合わない体質らしい。
呼吸は浅く、見るからに具合が悪そうで、ぐったりしている。
小泉はうららを抱き上げ、右肩に担いだ。
体をくの字に曲げた姿勢で、うららがうっすら目を開けた。
「ん…?」
「寝てろ。寝ていた方が、怖い思いをせずに済む。
ぐっすり寝てろ」
そう言われて、うららは目を閉じる。
すぐに寝息が聞こえてきた。
小泉はうららと自分の体を、ガムテープで何重にも固定した。
これでうららを落とす心配はない。
共に落ちる心配はあるが…
小泉は窓から身を乗り出した。
手製のロープを両手で握り締め、足を壁に当て、ゆっくり下り始めた。
到着したばかりの消防士が、下り始めた小泉達にすぐに気付いた。
慌てて分厚いマットをビルの隙間に敷き詰める。
杉村も駆け付けた。
6階から下りてくる二人を、心配そうに下から見上げていた。