おにぎり屋本舗 うらら
小泉は激しい疲労の中にいた。
こんなに神経を擦り減らした仕事は、久しぶりだと思っていた。
二人を固定していたガムテープが剥がされ、うららは小泉から下ろされた。
杉村が寝ているうららを横抱きにする。
小泉はビルの壁に背をもたれ、一呼吸置いてから言った。
「杉村警部、一応病院に連れて行ったほうがいい。
無理に酒を飲まされたようです」
杉村は小泉の左手をちらりと見て、言った。
「お前も病院行きだ」
「… 大丈夫です。
放火犯が逃走中なので、俺は…」
話している途中で、頭を叩かれた。
小泉の左手を、杉村が強引に掴んで目の前に持って来た。
彼の手の平は酷い有様だった。
ロープに手を滑らせたせいで、摩擦でできた火傷と深い擦り傷ができていた。
皮がむけ、肉が見え、血と滲出液で痛々しく濡れていた。