おにぎり屋本舗 うらら
背中の傷と消された聖女
◇◇◇
十年前の冬の話し…
小泉圭は高校三年生。
父親は警察官だが、同じ道に進む気はなく、
有名大学の法学部を受験するつもりでいた。
高校では、友達とくだらない話しをし、勉強をし、
放課後は部活動の空手に汗を流し…
そんなごく普通の高校生活を送っていた。
雪がチラチラ降る水曜日。
今は二時間目の授業中。
教師に指された友人に、こっそり解答を教えていた時、
圭のブレザーのポケットが震え始めた。
ポケットの中で携帯電話を確認すると、母親からの着信だった。
何かあったのかと嫌な予感を抱え、教師にトイレと断り、廊下に出た。
通話に出ると、母親の明るい声がした。
「ハロー圭!今朝ぶりね!
圭の声が聞きたくて、電話しちゃった!」
圭は無言で通話を切ろうとした。
それに気付き、母親は慌てて本当の用件を口にした。