おにぎり屋本舗 うらら
19階建ての茶色の建物が見えてきた。
すぐ近くに観光名所の時計台があり、
圭は観光客の間を縫うように通った。
市役所の敷地に入ると、立ち止まり、荒い呼吸を静めた。
空を仰ぐと、そびえ立つテレビ塔が視界に入る。
テレビ塔の電光掲示は、午前10時54分を示していた。
市役所に入ろうとした時、出てきた男と強く肩がぶつかり、尻餅をついてしまう。
配送業者風の、作業着を着た男。
ぶつかってきたのは、どちらかと言えばその男の方だが、
圭は反射的に「すみません」と謝っていた。
圭が謝っても、なぜか男は無反応だった。
ぶつかった事にも気付いていないような雰囲気だ。
圭は不思議に思い、その男の顔を見上げた。
顔が見えたのは一瞬で、男は圭の横を歩き、去って行く。