おにぎり屋本舗 うらら
 


圭は尻餅をついたまま、固まっていた。


気持ち悪い物を見た…
そんな気分だった。



一瞬だけ見えた男の口元は、薄く笑っていた。

目は血走り、焦点が合っていなかった。


その目に映る物は、圭と同じ世界ではなく、別次元の別世界…

そんな感じを受けた。


圭の腕に鳥肌が立っていた。



男が市役所の敷地から出て行くのを呆然と眺めていたが、

ハッと我に返り、立ち上がった。



母親に書類ケースを渡さねばならない。



圭は前を向いて歩き出す。


低い階段を三段上がり、自動ドアの前に立った。



その時…

耳をつんざくような凄まじい破壊音が響いた。



自動ドアのガラスが、粉々に砕け散る。



それと同時に、圭の体は数メートル後ろに吹っ飛ばされていた。



< 119 / 284 >

この作品をシェア

pagetop