おにぎり屋本舗 うらら
 



小泉が言う。



「おい、おにぎり屋、もう帰っていいぞ」



「はあ…」




帰ってよいと言われたが、うららは生返事で立ち上がろうとしない。



うららは考えようとしていた。


小泉が来たお陰ですんなり取り調べが終わった。

小泉が杉村の名前を出したことで終わった。

あの怖い取調官は杉村を恐れていたのか?



―――おっちゃんて、一体……



うららの頭に杉村の笑顔が浮かんだ。


白髪混じりの髪、日焼けした顔、ぽってりとした鼻、

笑うと目尻にたくさんのシワが寄る。

うららの記憶の中で、杉村はいつもニコニコ笑っているおじさんだ。

怖い杉村とは、一体どんな杉村なのか?



少し考えて、うららはその問題を投げ出した。


うららは深く考えることが苦手だった。

考えようとすると、頭にモヤが掛かり、ぼんやり霞んで何も見えなくなるのだ。



考えることを諦めたうららは立ち上がり、ペコリとお辞儀した。



「怖いお巡りさん、助けてくれてありがとうございました!」



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