おにぎり屋本舗 うらら
 


変わり果てた、父親の姿。

生気を失った父の顔に、圭の涙が落ちていた。



辺りは悲鳴や怒号、泣き叫ぶ声で、騒々しい。


その中に、小さな子供の泣き声を聞いた。



圭はゆっくり振り返る。


数メートル先で、倒れた母親の体にしがみつき、

3歳くらいの男の子が泣いていた。



父親の亡きがらを地面に横たえ、圭は立ち上がる。


男の子はズボンが裂け、足から血を流していた。



助けないと、と思った。


自分と同じく親を失った子供が、哀れでならなかった。



圭が歩き出すと、誰かが大声で叫んだ。



「危ない!倒れるぞっ!」



近くの街路樹に火が移っていた。


メラメラ燃える木がミシミシ音を立て傾き、

男の子の頭上に倒れるところだった。



走る圭が腕を伸ばし、男の子を突き飛ばす。



間一髪で男の子は難を逃れたが、

圭は…



倒れた木が圭の背中を潰していた。


背中が焼けていくのを感じながら、圭は意識を手放した…――――――




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