おにぎり屋本舗 うらら
燻る煙草と不吉な予言
◇◇◇
北国の短い夏が終わり、季節は秋になった。
街路樹は紅葉し、ナナカマドは赤い実をつけていた。
朝7時、寝床から出たうららは、
着替えをし、顔を洗い、朝ご飯の前に仏壇に向かった。
仏壇には、湯気立つご飯と新しい水が供えられている。
それらは、うららより早起きの梢が用意したものだ。
うららはお鈴をチンチンと鳴らし、手を合わせた。
仏壇の上には遺影が飾られている。
写真の初老の男は、紋付の着物ではなく、警察の制服を着ていた。
人生の半分以上を公安警察に捧げた夫には、その姿が似合うと梢が思ったからだ。
「じいちゃん、おはよう!
今日も一日、一生懸命働くからね!」
写真に向けてうららが言うと、隣の茶の間で梢の声がした。
「うらら、あんた今日は病院の日だよ」
「あ、忘れてた!」
「しっかりしなさいよ。
今日は、ばあちゃんも一緒に行くよ。久しぶりに先生に挨拶したいしね。
店は午後から開けるからね」