おにぎり屋本舗 うらら
二人が何を話しているのかなど、うららは気にしない。
すぐにでも眠ってしまいそうな心地好いソファーと空間に、ボンヤリしているだけだった。
数分後、うららがついウトウトしていると、隣のドアが開く。
梢がうららに言った。
「先生に挨拶も済んだから、先に帰るよ。
この分だと、いつもの時間に店を開けられそうだよ。
うららはゆっくりでいいからね」
梢が帰ると、医師はうららの向かいのソファーに座った。
幾つか質問を投げかけ、うららはそれに答える。
「変な夢… あれ?前回話した変な夢の内容、何だったかな?
忘れちゃった…」
「忘れていいんだよ。
夢という物は、長く記憶に残らないよう出来ているからね」
「そっか。うん、分かった」
「じゃあ、最近は変な夢を見ないということかな?」
「う〜ん… あのね、火事の夢を見る。あっちこっちが燃えているの。
でもそれは、変な夢じゃないんだ。
夏にね、酔っ払って覚えてないけど、実際に火事に巻き込まれたの。
お巡りさんが助けてくれたんだ」
「そうかい… 分かったよ。
じゃあ、催眠療法に入ろうか」
「はーい、お願いします」