おにぎり屋本舗 うらら
及川は、この男が犯人だと確信していた。
恋人関係が破綻した時、殺意を抱くのはよくある話しだ。
及川が拭き終えた眼鏡をかけ直すと、
取調室のドアがノックされ開けられた。
入って来た男を見て、及川は嫌な顔をする。
「これはこれは小泉警部。
また僕の邪魔をしにいらしたのですか?
残念ですが、今回の事件は疑う余地もなく犯人は彼です。
SMRの出番はありません」
及川にとってSMRは疎ましい存在だった。
自分の捜査チームが懸命に捜査し、犯人に目星を付けたのに、
SMRに捜査資料をチラリと見られ、
「そいつは違う」と言われたことが数回あった。
SMRに先に真犯人を見つけられることも、しばしば。
誤認逮捕を起こさず、真犯人検挙に繋がるなら良いことではあるが、
及川にしたら、自分の捜査を否定された気分で面白くなかった。