おにぎり屋本舗 うらら
復活と崩壊
◇◇◇
雪が降る。
冷たい北風が吹き、長く厳しい冬の始まりを告げていた。
おにぎり屋は、季節問わず忙しい。
今日も大勢の客の腹を、梢の温かいおにぎりが満たしていた。
夜8時。
「ごっそさん、母さんまた明日な」
最後の客が帰ると、店じまい。
暖簾を仕舞いに外に出て、うららは寒さに震えた。
黒い空から、粉雪が舞い降りる。
街灯の明かりを浴び、風に揺られて落ちてくる。
寒いけど綺麗だと思い、うららは天を仰いでいた。
その時、「桜庭うらら」と誰かに呼ばれた。
振り向くと、約一ヶ月半ぶりの小泉がいた。
コートの肩に雪を積もらせているのを見れば、長時間外にいたことが分かる。
うららはパッと笑顔になる。
大きな声で彼の名前を呼ぼうとしたが、
素早く伸びる大きな手に口を塞がれた。