おにぎり屋本舗 うらら
昼の混雑が過ぎた時、梢がおにぎり8個をうららに渡す。
うららはそれを桜模様の風呂敷に包み、
「行ってきます!」
と元気に店から出て行った。
店を出てビルの角を一つ曲がり、少し歩くと交番がある。
うららは元気にドアを開け、中に入った。
「毎度さまです!」
紺色の制服を着た警察官が、三人いた。
皆、事務机に向かい座っている。
三人の中で白髪が目立つ一番年長の警察官に、うららはおにぎりを渡した。
「おっちゃん、いつもありがとね」
「いやいや、こっちこそ届けて貰ってすまんな。
やっぱり梢さんのおにぎりが天下一品。
これを食わんと一日が始まらん」
時刻は午後2時だというのに、おかしな事を言う。
うららは「あはは」と声を上げて笑った。
喜々として風呂敷包みを開いたこの警察官の名前は、杉村。
杉村は8個のおにぎりを同僚二人と自分、それから彼の向かいに座る男に分けた。
三人の警察官の他に、黒いスーツを着た男がいた。
パイプ椅子に座り、眉間にシワを寄せ、
「いらない」とおにぎりを杉村に突き返していた。