おにぎり屋本舗 うらら
焦る及川に答えたのは、小泉ではなく上島だった。
「刑事さん、俺は確かに包丁に触ったよ。
でもそれは、刺したんじゃなく、抜こうとしたんだ。
ゆりえが死んでるのは一目で分かったけど…気が動転して…抜けば息を吹き返すかもなんてさ…
ゆりえ…ゆりえ…本当に死んじまったんだよな…うっううう…」
小泉はノートパソコンを閉じ、小脇に抱えた。
恋人を失った上島を、気の毒そうな目で見て言った。
「上島さんは殺していない。
逆手で包丁を握っていたのが、指紋の位置から分かる。
胸部刺し傷の位置、角度、深さから考えると、逆手で握った包丁ではこの傷は付けられない。
指紋が付かないよう犯人は手袋を嵌めて被害者を殺害し、
バイトから帰った上島さんが被害者を発見して、慌てて包丁を抜こうとした…
それが事実です」