おにぎり屋本舗 うらら
乾いた血の臭いに我慢できず、知本が窓を開けた。
初夏の爽やかな風が吹き込み、小泉の前髪を揺らした。
知本が聞く。
「小泉警部、まだ何か気になるのですか?」
「いや… 念のため、何か見落としはないかと、来てみただけだ」
小泉は事件をこう考えていた。
犯行は店長田中が単独で行った。
アルバイト鈴木は、口裏を合わされただけ。
コンビニの他の店員に聞いたところ、
事件の数日前、鈴木は何かをやらかして、店長にかなり叱られていたらしい。
何をしたのか分からないが、それをチャラにするのと引き換えに、嘘をつかされたのだろう。
小泉は部屋の中をゆっくり歩き、確かめるように視線を巡らせていた。
その背中に知本が尋ねる。
「犯人が店長田中なら、被害女性とどんな関係だったのでしょうね?
被害者は上島の恋人。
三角関係だったのでしょうか?」
「さあな。関係と動機は、一課が調べるだろう」