おにぎり屋本舗 うらら
事件が終結を迎えても、その場の空気は重苦しい。
誰もが小泉の殉職を疑わなかった。
その中で、うららだけは信じられずにいた。
瓦礫が山となっている状況を見れば、死亡の二文字が頭を過ぎる。
それでも、信じたくない。
瓦礫の下で、きっと生きていると思いたかった。
知本はうららの横にしゃがみ、背中を撫でてやった。
掛ける言葉は見つからない。
自分も相当辛い心境だが、
きっと、彼女の苦しみ悲しみの方が深いだろうと、分かっていたからだ。
消防車やレスキュー隊が、わらわらと動いていた。
瓦礫を崩さぬよう慎重に中に潜り、生存者を捜していた。
うららのもとに、小山内本部長がやって来た。
彼は哀れみの目を、うららに向けて言った。
「済まないが… 署まで来てもらおうか。
逮捕しないが、君から話しを聞かないとならない」
うららは首を横に振った。
「小泉さんが…小泉さんが出て来るまで、私はここにいます」
止まらない涙が、ハラハラと積もった雪に落ちて行く。
知本は悲しげに、彼女を見た。
小山内は、深い溜息をついた。