おにぎり屋本舗 うらら
堅物と幸せな未来
◇◇◇
年が明けて、3月。
春はまだ遠く、北の街は雪に覆われている。
ビル街も時計台もテレビ塔も、全てが白く霞む中、
木造二階建てのおにぎり屋は、今日も客の腹と心を、温かく満たしていた。
昼の混雑時、梢のおにぎりは飛ぶように売れて行く。
うららは、平和で忙しい日常を取り戻していた。
でも、ここの所、元気がない。
常連客が、持ち帰り用おにぎりを受け取りながら、うららを心配した。
「どうした?最近、元気ないな」
そう言われ、うららは慌てて笑顔を作る。
「元気ですよ!」
無理して笑うが、心の中は沈んでいた。