おにぎり屋本舗 うらら
小泉が目覚めたのは、それから2時間半後のこと。
映画がちょうど2周目を終えたところであった。
薄明るいシアター内で、隣にうららがいない事に気づく。
腕時計を見て、随分長く寝てしまったと知る。
それから、手に何かを握っていることも。
それは、うららの丸字が連なるメモ用紙だ。
『ちょっとだけバーゲンに行って来ます。起きたら連絡下さい』
うららは小泉が疲れていると思い、起こさなかったのだ。
寝ている間に、行きたかった夏物バーゲンを見てこようと考えたようだ。
小泉はあくびを一つ、立ち上がった。
映画館のロビーに出てから、携帯電話でうららに連絡する。
うららは出なかった。
賑やかな場所で、着信音に気づかないのかも知れない。