おにぎり屋本舗 うらら
杉村の話題は終わり、二人は遅い昼食をとる。
客のいないカウンターに並んで座り、うららの握ったおにぎりを食べ始めた。
梢は一口食べて「68点」と点数を付けた。
うららは口を尖らせる。
「え〜、今日は上手く握れたと思ったのに…」
うららのおにぎりの腕前は、一般主婦レベルだ。
見た目も良く美味しいおにぎりではあるが、名人の梢にしてみれば、まだまだだ。
うららのおにぎりを味わいながら、梢が笑って言う。
「初めは誰でも下手くそさ。
昨日は65点だったから、今日は3点上がってるよ。進歩、進歩」
進歩していると言われ、うららはパッと笑顔になった。
「上手になってるなら、68点でもいいや、アハハッ」
壁の高い位置には、テレビを据え付けていた。
昼過ぎのワイドショーでは、ほのぼのとした二人には似合わない殺人事件を報道していた。
うららは自分で作ったおにぎりを食べながら、何気なくテレビを見て、
「あっ!」と声を上げた。