おにぎり屋本舗 うらら
「杉村警部、一体いつまで交番勤務を続けるつもりですか」
「俺はもう警部じゃなく、巡査部長。
お前の部下だな。
おっとすまん、お前じゃ駄目だな。小泉警部、失礼した」
杉村は筋子おにぎりを食べ終えると、次に紅鮭おにぎりの包みを開けている。
小泉の睨むような視線と目を合わせながら、実に旨そうに食べていた。
苛ついた小泉は、事務机に拳を叩きつけ、声を荒げる。
「警部!早く本庁に戻って下さい!
SMRはあなたが作った対策室だ!
それを俺に押し付け、こんな所で何をしている!」
「そうカッカすんな。血圧上がるぞ。
お前なら大丈夫だと思ってのことさ。
小泉室長、まぁ頑張ってくれ」
うららはポカンとしながら二人の話しを聞いていた。
杉村は三年前からこの交番に勤務している。
うちのおにぎりを毎日のように注文してくれるお得意様だ。
気のいい街のお巡りさんである杉村しか知らないうららには、
小泉の言葉が上手く理解できない。
小泉は杉村を元の部署に戻したかった。
かつての上司杉村は優秀な刑事だった。
それが三年前に突然本庁を去り、交番勤務だ。
元は警部であったのに、自ら望んで巡査部長に降格したと言う。
尊敬していた分、納得いく話しではない。