おにぎり屋本舗 うらら
驚き焦るうららを、更に驚かせることが起きた。
うららの横にあるマンションの高い塀、
そこを飛び越え、誰かが突然、うららの目の前に飛び下りたのだ。
鮮やかに着地し、すぐさま前方に向け走って行った男は……
さっき交番で会ったばかりの小泉だった。
小泉の走りは速かった。
前方10メートル先を走る引ったくり犯に、たちまち追いつき、腕を捕らえた。
犯人は暴れる。
小泉から逃れようと、殴り掛かり、蹴りを飛ばす。
犯人の蹴りが小泉の顔を掠め、小泉は捕まえていた腕を離した。
うららは驚いて、傘を差すことも忘れていた。
前方で繰り広げられる小泉と引ったくり犯の戦いを、雨に濡れながら茫然と見ているだけだった。
犯人の強烈な蹴りを、小泉は左腕で受け止める。
右ストレートをかわし、その腕を捕らえて後ろに捻り上げ、
足元を払い、地面に俯せに倒した。
すぐさま背中を膝で押さえ、腕に手錠をかける。
小泉は肩で呼吸しながら、引ったくり犯に言った。
「とりあえず、公務執行妨害で逮捕だ」