おにぎり屋本舗 うらら
◇◇
うららは取調室にいた。
取調室に入るのは二度目だが、慣れるものではない。
目の前で厳しい顔して取り調べているのは、小泉ではない。
見知らぬ刑事だ。
小泉はどこかへ行ってしまった。
うららの側にいてくれなかった。
それは仕方のないこと。
この事件の主役は捜査4課であり、小泉達SMRは手伝っていただけなのだから。
うららは心細さに堪えながら、黒飴はボーリング店主に貰ったものだと説明している。
きちんと正直に全てを説明しているのに、目の前の刑事は何度も同じ質問をする。
「ボーリング店主は飴玉を一つ取って君にくれた。
その手は右手?左手?」
「えーと…左手?」
「左手なの?さっきは右手って言ったけど」
「あれ?右手だったかな?」
「忘れちゃったの?
それとも本当は、ボーリング店に入っていないんじゃないの?」
同じ質問を何度もされている内に、うららの記憶が曖昧になってくる。
時刻は夜の八時になっていた。
取調室に入ってから、三時間…
いつになれば帰してもらえるのか分からなかった。