おにぎり屋本舗 うらら
うららの戸籍上の父親は、公安の桜庭という男だった。
三年前に70歳で他界したが、それまでは梢とうららの三人家族だった。
うららは梢を「ばあちゃん」、桜庭を「じいちゃん」と呼んでいる。
それは十年前、8歳のうららが養女として貰われて来た時、
親子に見えない歳の差に、そう呼べと言われたからだ。
杉村はうららをおにぎり屋まで送る。
「おっちゃんありがと。
また明日ね!」
うららはそう言って手を振り、玄関ドアの中に消えた。
うららがいなくなると、
杉村はにこやかな笑顔をスッと消した。
ポケットから煙草を取り出し、煙りをゆっくり夜空にくゆらす。
「聖女アバタリ…」
そう呟き、うららの消えた玄関扉を、ジットリと見つめていた。
―――――…