おにぎり屋本舗 うらら
 


その会話から野村と亀田という二人の男が、株について話しているのが分かるが…



会話が遠退いて行くと、小泉は素早くオフィスを出た。



隣のセミナー会場に入って行く人波に、見慣れた背中を見つけ、目を見張る。



杉村警部…いや、杉村巡査部長だ。

今日は非番らしく、私服姿で、隣の男と談笑しながら、会場内に消えて行った。



小泉は驚いていた。

杉村は自己啓発セミナーに参加するような性格ではない。


それなのに、今からこのセミナーに参加するようだ。


しかも、さっきの会話から推測すると、何度も参加している常連…


『亀田』と偽名を使い参加する意味は……



小泉はこう思った。

杉村が何かを調べていると。


刑事を辞め、今は交番勤務の杉村が、単独で何を探っている…?



セミナー会場のドアが閉まり、賑やかさはドアの向こうに閉じ込められた。


小泉はエレベーターに向け、歩き出す。



疑問を残したままで気持ち悪いが、SMRの室長は、誰よりも忙しいのだ。



―――――…



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