おにぎり屋本舗 うらら
◇◇
翌日、今日もうららは交番におにぎりを届けた。
交番内には杉村しかいない。
若い警察官達は、どこかで仕事のようだ。
杉村は受け取ったおにぎりを、いつものように旨そうに食べ始める。
「握り具合が何とも言えんな〜
手で持って崩れず、口に入れて飯粒がホロリと解ける。
塩加減も絶妙だ。あ〜梢さんのおにぎりは旨いな〜」
うららは旨そうに食べる杉村の顔が好きだった。
ニコニコ笑顔をもう少し見ていたいところだが、今日はゆっくりしていられない。
うららの手には杉村に渡した物の他に、もう一つ桜模様の風呂敷包みが握られていた。
配達先がもう一つあるのだ。
「おっちゃん、またね!」
元気にそう言って、うららは交番を後にした。
配達先は、ここから10分歩いたオフィスビルにある。
新緑の芝生が美しい大通公園を通り、信号を二つ渡った。
目の前のビルの一階にはコンビニエンスストアが入っていて、
「春のスイーツ祭開催中」
の旗が、入口に立っていた。