おにぎり屋本舗 うらら
うららが何気なくその旗を見て、コンビニを通り過ぎ、次の角を曲がろうとした時…
コンビニから走り出て来た男に、後ろからぶつかられた。
手にしていた風呂敷包みが投げ出された。
おにぎりが五つ、地面に転がった。
ぶつかって来た男とうららも、もつれるようにアスファルトに転がる。
うららは肘と膝、額にも擦り傷を作ってしまった。
額の傷を気にしながらも、うららは身を起こし、男を心配する。
「大丈夫ですか!?」
「うっ…」と呻き、よろよろと上体を起こした男は、変わった格好をしていた。
歳は40くらいか、
もう春だというのに、黒い毛糸の帽子を被り、白い軍手を嵌めていた。
白いマスクにサングラス、グレーのスウェット上下を着ている。
ここは街の中心部。
ラフな格好をしている人は、あまり歩いていない。
うららは男を心配しながらも、変わった人だと思っていた。