おにぎり屋本舗 うらら
 


身を起こした男とうららの目が合った。


男はハッとした顔をして、サングラスを外した。


それからうららの顔や体をマジマジと見ていた。



「姫様…?」



男の言葉に、うららはポカンとしていた。

姫様と聞かれた気がしたが、気のせいだろうかと考えていた。



うららが首を捻ると、前髪がサラサラと左に流れた。


男は軍手を嵌めた手を伸ばし、うららの前髪を掻き分ける。


うららは驚いて、男の手を払った。



「三日月…」

と呟く男。


うららの額、髪の生え際近くにはほくろがあった。

三日月の変わった形をした小さなほくろだ。


男は三日月のほくろを見た後、突然涙を流した。



うららは困っていた。

男に外傷はないようだが、頭を打ったのかも知れない。そう思っていた。



救急車を呼ぶべきか…

うららがエプロンのポケットから携帯電話を取り出そうとすると…


後ろから
「コンビニ強盗だー!」
と大声がした。



うららは座ったまま振り返る。

さっき通り過ぎたコンビニから店員が出て来て、

両手足を紐で縛られた状態で、ピョンピョン跳びはねながら、店前で叫んでいるのだ。



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