おにぎり屋本舗 うらら
男は慌てて立ち上がり、サングラスをかけ直した。
「姫様、お納め下さい」
そう言って鞄の中から何かを取り出し、うららのポケットに捩込む。
うららはこの男がコンビニ強盗だと理解すると、驚きと恐怖で動けずにいた。
怯えるうららを男は悲しげに見つめる。
それから、ビル群の向こうに走り去って消えた。
◇◇
30分後…
うららは今、警察署にいた。
取調室は色味のない淋しい空間。
窓には鉄格子、壁にはマジックミラー、
簡素な事務テーブルを挟んで向かいに座るのは、うららを取り調べる警察官。
取調官はうららに厳しい目を向け、テーブルを指でコツコツ叩く。
「へぇー、突然知らない男が姫様と言って、札束をポケットに捩込んでから逃げたと…
お嬢ちゃんは、巻き込まれただけで、何も知らない…」
取調官はうららの供述を繰り返した。
うららは何度も頷いた。
取調室に怒号が響く。
「そんな訳あるかっ!!
見知らぬ女に、盗んだ金をくれてやるコンビニ強盗がどこにいるっ!
正直に言え。お前は奴の仲間なんだろ?
姫様ってことは、窃盗団の頭の女か?ああん?」