レッスンはアフターで
あぁ、もう!どうして、今日に限ってセンチメンタルになるのよ!


心で自身に毒づいても、理由なんてわかりきっている。


認めたくないんだ。小さなプライドが邪魔しているだけ。


一度崩壊した涙腺は、最低男が焦って指で拭っても、遠目で心配そうにする綾香が見えても、最低男に迫る美女が私を馬鹿にしても、止まることがなかった。


「ごめ、ん。ほら、親友、の、幸せそ、うな、顔。うれ、し、くて」


嗚咽が邪魔して聞き取れないだろうが、最低男にもっともらしい言葉を連ねた。


少しだけざわざわした周り。


「ありがとう、愛奈ちゃん。お酒が入ると泣き上戸になるの忘れてたよ」


挨拶まわりをしていたはずの二人が目の前にやって来た。


どうりで、ざわつくわけだ。


でも、救われた。


さすが、順一さんと綾香だ。


「やだ。順一さんだって、飼い猫が行方不明で泣いていたじゃない」


いつの間にか涙が止まって自然と笑える。
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