レッスンはアフターで
「ちょっ、待っ!それは、ここでは」


シーと唇に指を押しあて慌てる順一さんを見ていたら、ギスギスした心が落ち着いていく。


「綾香、順一さんおめでとうございます!お幸せに。それから、順一さん。ここの会員になりますので宜しくお願いします」


ペコッと頭を下げた。


ごまかしてくれてありがとう。変な騒ぎにならなくてよかった。


そのお礼にというわけでもないが、いいチャンスだと思う。


今までの所とは違い、此処は庶民的で会社からも近い。


結婚したら綾香と夜に食事をすることも減るだろうし、アラサーには体の衰えが見えてくる。


ちょうどいいい。自分の時間を有効活用しよう。


前向きな自分に拍手。


ウキウキと次のグラスをもらいに手を伸ばした。


―――が、

その手がグラスに届くことがなく、誰かに捕まれた。


「ちょっと!何するの?」


「気が変わらないうちに会員の手続きをと思って」

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